例えば…
ABS(車がスリップしにくくなる装置)がついている車とついていな車の事故率は,実はほとんど同じです.これは,ドライバーが「ABSがついているから少しぐらい乱暴な運転をしても大丈夫だろう」と思ってしまうから.「大丈夫だろう」と思ってしまう「人間」の特徴を知らずに安全対策を考えても,期待していたほど効果が出ないことがあります.当研究室ではそんな「人間」の特徴にスポットを当て,安全対策に役立てるための研究をしています.
背景
WHOによると,世界で毎年120万人の人が交通事故によって亡くなっています.これはイラク戦争の7.5倍,コレラの10倍,東日本大震災の実に75倍にあたる数です(Fig.1).医療事故では,交通事故よりもずっと多くの人が亡くなっているとする研究もあります.事故は世界中でまんべんなく起こるので,戦争や貧困や病気ほど注目をされない場合もありますが,事故を減らすための取り組みも,戦争や貧困や病気をなくそうとする取り組みと同じぐらい重要なのです.
Fig.1 Traffic accidents kill more than 1.2 million people per year in the world
方法論
研究室名に「工学」がついているので,理系でエンジニアリングをやっている研究室だと思われがちですが,主に使っている研究手法は「心理学」の手法です.
例えば,道路交通システムは,自動車や信号機などの機械と,ドライバーや歩行者などの人間が組み合わされたシステムです.いわゆるエンジニアリングは,この機械ー人間系のシステムのうち,主に機械側に対する改良や対策で安全を目指します.一方,我々安全人間工学は,人間側の特性を明らかにしたり,心理学の知見を利用した行動変容をもたらしたりすることで安全を目指しています.
現代社会では,あらゆる仕組みが機械ー人間の組み合わせでできています.航空機,鉄道,原子力発電所,病院,建設作業現場など.あらゆる分野で人間を見つめる立場として,エンジニアリングの対極にあって,それでいていエンジニアリングと協調して安全を担保していこうとする,それが安全人間工学です.
研究の具体例
Q&A
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